にじげん名駅
花火の光を映すラムネ瓶|夏のきらめきを描いた作品
今回は、利用者様が制作された、**「ラムネ瓶」と「花火」**をモチーフにした夏のイラストをご紹介します。
中身がこぼれているラムネ瓶の向こう側には、夜空いっぱいに打ち上がる花火。
その光によって、ガラスやしずくがきらきらと照らされています。
見た瞬間の華やかさだけではなく、光の屈折やガラスの質感、水しぶきの表現など、細かな部分まで丁寧に考えながら制作された作品です。
今回は、作品が完成するまでの考え方や工夫、そして作品に込めた想いについてお話を伺いました。

✦ **「自信をもって提出できる作品」**を目指して
今回の作品制作にあたり、利用者様がまず大切にされたのは、
「お仕事として任された以上、自信をもって提出できる完成度のものを作りたい」
という気持ちでした。
ただ絵を完成させることだけを目標にするのではなく、自分自身が納得できるところまで考え、調べ、表現していく。
その姿勢が、今回の作品づくりの土台になっています。
✦ 得意な表現から選んだ**「ラムネ瓶」**
いくつかの作品を描いていく中で、利用者様自身が気づいたことがありました。
それが、水やビニールなどの**「透けているものの表現」**が得意だということです。
そこで今回、夏らしいモチーフとして選んだのがラムネ瓶でした。
一方で、透明なラムネ瓶は、周囲の光や背景の影響を強く受けるモチーフでもあります。
そのため、「どのような場所に置かれているのか」「どこから光が当たっているのか」という状況そのものを考える必要がありました。
そこで光源として設定したのが、夏を代表する**「花火」**です。
ラムネ瓶と花火。
どちらも夏らしさを感じるモチーフですが、見た目だけではなく、光と透明感という表現面でもつながりを持たせています。
✦ **「動き」**を生み出す構図の工夫
近景の主役となるラムネ瓶は、工業製品であるため、基本的には整った形をしています。
その瓶を単純にまっすぐ配置してしまうと、背景で大きく広がる躍動的な花火に対して、画面全体が少し単調に見えてしまうのではないかと考えました。
そこで、瓶そのものを傾けて配置。
さらに、中身をこぼすことで**「流動性」**を加えています。
瓶の静かな硬さと、水の動き。
その奥で広がる花火。
異なる性質を持つものを組み合わせることで、画面の中に自然な動きが生まれるよう工夫されています。
✦ 一番苦労した**「光の屈折」**
今回、特に難しかったのが、ラムネ瓶越しに見える光の屈折表現でした。
ラムネ瓶は全体が曲線で構成され、形そのものも複雑です。
さらに筒状のガラスを通して花火を見るため、光は単純にそのまま透過するわけではありません。
そこで制作の際には、小学校の理科について解説しているWebサイトを複数確認したり、たくさんの画像資料を集めたりしながら、比較と考察を重ねました。
利用者様は、普段からどんな絵を描くときにも、一つのモチーフにつき**「2枚以上の資料」**を準備するようにされているそうです。
その中でも今回のラムネ瓶は、これまで作業所で描いてきた作品の中で、最も多く調べたモチーフだったとのことでした。
最終的には、範囲選択を行ったうえで、強めの**「膨張ゆがみツール」**を使い、光が散乱しているように見せる方法を採用しました。
一方で、「もう少しこだわれた気もする」という悔しさも残っているそうです。
完成だけで終わらず、「もっとできたかもしれない」と振り返ることも、次の作品につながる大切な気づきになっています。
✦ 上手く表現できた**「ガラス」と「水しぶき」**
今回、特に上手くできたと感じているのが、**「ガラスの質感」と「水しぶき」**の描き込みです。
ラムネ瓶が持つ、透けていて無機的な印象。
そして、実際に触れたときに感じるガラスの硬さ。
それらを表現するため、瓶の縁などには、明暗差の大きいハイコントラストな色を使用しました。
水しぶきにも同じ色を使用していますが、ガラスと同じ見え方にならないよう、液体であることを意識。
手ブレ補正を弱くしたペンを使って、細かな凹凸をつくることで、ガラスとは異なる質感を表現しています。
同じような色を使っていても、「硬いもの」と「流れるもの」の違いが伝わるよう描き分けられています。
✦ 伝えたかった**「夏のきらきらした眩しさ」**
今回、花火という光源と、その光を透過・反射するラムネ瓶を組み合わせた背景には、夏の**「きらきらして眩しいところ」**を表現したいという想いがありました。
夜空で大きく広がる花火。
その光を受ける瓶。
こぼれ落ちる水。
それぞれの光が重なることで、夏の一瞬の輝きを感じてもらえたら、という気持ちが込められています。
✦ ラムネ瓶の向こうにある**「小さな物語」**
この作品には、もう一つ見てほしいポイントがあります。
それは、ラムネ瓶の中身が少なく、しかもこぼれていることです。
瓶の中身が外へ出ているということは、誰かがラムネを購入し、すでに開封したあとだということになります。
さらに、中身の量をあえて少なく描くことで、**「飲みかけのラムネ」**であることも表現しています。
では、このラムネを飲んでいたのは誰なのでしょうか。
なぜ、飲みかけの瓶を落としたのでしょうか。
作品の中では、その答えは描かれていません。
だからこそ、作品を見た方それぞれに、
「どんな人が、どうしてこのラムネ瓶を落としたのだろう」
と、その前後にある出来事まで想像してもらえたら嬉しいとのことでした。
一枚の絵から、その先にある物語まで想像できる。
そんな楽しみ方も、この作品の魅力の一つです。
✦ スタッフから見た**「制作への向き合い方」**
今回の制作では、完成した作品そのものだけでなく、その前段階にある資料集めや考察にも、とても丁寧に取り組まれていました。
作品を制作するうえで大切な、
「資料を集めること」
「なぜこの表現にするのか根拠を考えること」
「完成するビジュアルを設計すること」
こうした部分に、しっかりと時間をかけて取り組まれています。
スタッフにとっても、「こうした工程があるからこそ、作品が少しずつ形になっていくのだ」と改めて学ばせていただく機会となりました。
✦ 次に挑戦したい**「食べ物」と「風景」**
今後は、本物そっくりに見える食べ物のイラストにも挑戦してみたいとのことです。
料理は、食材ごとに硬さや柔らかさ、光沢、透明感など、さまざまな質感が組み合わされています。
それらを一つずつ描き分けることが、自分自身の成長にもつながるのではないかと考えています。
さらに、パースのある室内など、**「遠景・中景・近景」**がそろった情報量の多い風景にも挑戦したいそうです。
空気感による描き込みのコントロール。
自然でありながら見応えのあるライティング。
そして構図。
今回の作品で得た経験を活かしながら、さらに理解を深めていきたいという次の目標が生まれています。
✦ 一つの作品から、次の挑戦へ
今回の作品には、ラムネ瓶や花火という身近な夏のモチーフの中に、光の屈折、ガラス、水、構図、資料収集など、さまざまな工夫が詰まっています。
作品を描くことだけではなく、必要な資料を調べ、
「なぜこのように見えるのか」
「どのように描けば伝わるのか」
を考えながら、一つずつ形にしていく。
そうした制作の過程も、大切な作品づくりの一部です。
ラムネ瓶に映る花火の光や、こぼれ落ちる水のきらめきから、それぞれの方が持つ夏の記憶や、小さな物語を感じていただけたら嬉しく思います。
作品づくりやイラスト制作に興味のある方は、ぜひ見学や体験を通して、実際の制作の様子や取り組みの雰囲気をご覧ください。
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